ワクチン接種後の健康被害に備える「救済制度」とは?
新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種が始まった2021年8月以降、厚生労働省は**「予防接種健康被害救済制度」**を運用しています。この制度は、接種後に重篤な健康被害が生じた場合、医療費や障害年金、死亡一時金などが給付される仕組みです。
本制度の目的は、接種後に健康被害を被った方々への迅速かつ適切な救済を行うことにあります。そのため、通常の損害賠償制度と異なり、因果関係の「厳密な証明」は求められません。
救済認定件数は累計9,031件に到達【2025年3月時点】
厚生労働省が2025年3月に公表したデータによると、これまでに新型コロナワクチン接種後に健康被害救済を申請した件数のうち、9,031件が認定されました。このうち、死亡事例は998件に上ります。
これは、全体の約11%に相当するもので、国民の間で副反応や後遺症への関心が高まりつつある背景を浮き彫りにしています。
「因果関係が否定できない」死亡事例はわずか2件
注目すべきは、有識者による副反応の医学的評価です。厚労省が設置する専門家会議では、死亡事例一つひとつについてワクチンとの因果関係の有無を評価しています。
2025年3月時点で評価された998件の死亡事例のうち、「ワクチンとの因果関係が否定できない」とされたのは、わずか2件に留まっています。これは全体の0.2%未満であり、因果関係の認定は極めて慎重に行われていることが分かります。
一方で、多くの事例では「情報不足等により判断できない」「他の要因による可能性が高い」などの評価が下されており、ワクチンが直接的な原因とは断定できないケースがほとんどです。
救済制度の申請には「時間」と「労力」がかかる?
救済制度は国が保証する公的制度である一方で、申請手続きの煩雑さや審査期間の長さに対する不満の声も上がっています。
主な課題:
- 提出書類の多さ:診断書や接種履歴、医療費の領収書など複数の書類が必要。
- 審査に時間がかかる:申請から認定まで数ヶ月~1年以上かかることも。
- 申請者への情報提供不足:制度自体を知らずに申請を諦める人もいる。
特に高齢者や障害のある方にとっては、家族のサポートがなければ申請が難しいのが実情です。
専門家の見解:制度のあり方はこのままで良いのか?
複数の専門家は「ワクチン接種のリスクとベネフィットを正しく伝える仕組みが必要」と訴えています。たとえば、副反応が起こる可能性については、過度に不安を煽ることなく、科学的な根拠に基づいて説明すべきという指摘があります。
また、「因果関係が完全には証明されない場合でも、被害者が泣き寝入りしないような補償体制を作るべきだ」といった意見もあります。
健康被害救済制度を利用するには?申請の流れ
新型コロナワクチン接種後に重篤な副反応が出た場合、次のような手順で申請を行います。
- 市区町村窓口に相談
- 必要書類の準備(診断書・領収書等)
- 自治体を通じて国へ申請
- 厚生労働省の審査を受け、認定
- 医療費・一時金などが支給
被害者本人だけでなく、遺族も代理申請が可能です。特に死亡事例においては、死亡一時金(最大約4,400,000円)や葬祭料などが支給される可能性があります。
まとめ:今後の制度改善と国民の理解がカギ
2025年現在、新型コロナワクチンの副反応による健康被害救済制度は、一定の成果を上げているものの、迅速性・簡素化・情報提供の充実といった点での改善が求められています。
被害者の立場に立った運用がなされることで、ワクチン接種への信頼回復や、将来的な感染症対策への備えにもつながるでしょう。
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